倉敷平成病院薬剤部は13名の薬剤師(うち1名育児休暇中)と2名の調剤補助員で業務を行っています(2021年4月時点)。薬剤管理指導業務・病棟薬剤業務など、主に入院薬物治療に関する業務を行っており、外来のお薬は院外処方です。多職種連携を推進し、感染制御チーム(ICT)、抗菌薬適正使用チーム(AST)、栄養サポートチーム (NST)、褥瘡対策チーム、認知症・せん妄サポートチーム(DST)、糖尿病ケアチーム(DCT)、骨粗鬆症チーム(OLS)などのチーム医療において、NST専門療法士や糖尿病療養指導士などの資格を活かし、チーム医療の一員として安心・安全な医療の提供に努めています。
当院では2013 年12 月に電子カルテ(富士通)が導入されました。医師が電子カルテで入力した処方データは、ネットワークで連携された薬剤部門システム(トーショー) を介して調剤を行います。調剤業務をシステム化することで、用法・用量、相互作用・禁忌・重複投与などについて効率よく確実にチェックする体制を整備し、調剤時の人為的ミスを減少させるように工夫し、より有効で安全な薬物治療に努めています。調剤時には、患者さん一人ひとりの過去のお薬の記録をリアルタイムで照会し、薬剤の量や種類などについての変更点を速やかにチェックします。処方内容に疑問が生じた場合は、処方医に確認してから調剤を行います。必要に応じて、薬の粉砕化を行ったり、全自動錠剤分包システム・散薬分包システムを用いて薬を一包化したりします。調剤された薬は、別の薬剤師により監査され、患者さんのところへ送られます。
医師が電子カルテで入力した注射薬処方データは、ネットワークで連携された薬剤部内の部門システムに送られ、注射処方せん・注射ラベルを発行します。処方データについて、薬剤師が、注射薬の配合変化、注射薬・飲み薬との相互作用、年齢・体重・腎機能や検査値についてのチェックを行った後、注射薬室で注射処方せんに基づいて、入院患者さん一人ひとりの注射薬を個別に取り揃えます。また、高カロリー輸液などの感染リスクの高い注射薬剤については、薬剤部内注射混合室のクリーンベンチ内で無菌的に混合調製しています。
病棟薬剤師業務では、各病棟に専任の薬剤師を配置して病棟に長時間滞在することで、看護師などの他職種と連携をしながら、薬物療法への介入、入院患者さんの手術前後のお薬の管理や、入院されてから退院されるまでの薬歴の管理、ハイリスク薬等についての説明、病棟配置医薬品の管理などに関わっています。入院時の持参薬は、全入院患者さんを対象に、病棟担当薬剤師が速やかにチェックして持参薬鑑別表を作成し、医師へ薬物治療の提案を行います。また、病棟で開催されるカンファレンスに参加するなどして、医師・看護師・MSW などの他職種と、退院に向けた治療目的と現在の状況を情報共有し、きめ細かいチーム医療を行えるように努めています。また、入院患者さんへの薬剤管理指導業務を通して服薬指導を行うとともに、副作用を早期に発見することで、医薬品の適正使用やリスクマネージメントに貢献しています。退院時には、お薬手帳や情報提供書などを活用して、退院後の医療機関や施設、かかりつけ調剤薬局などに情報提供できるように工夫しています。
当院で採用している医薬品に関する情報は、医薬品情報室(DI 室)で管理しています。各医療スタッフ向けに、DI ニュースを毎月発行して医薬品の適正使用について情報提供しています。緊急性の高い情報については、臨時DIニュースを発行して、必要な部署への情報提供を速やかに行っています。その他に、定期的に開催される薬事委員会の事務局を担当したり、治験薬の管理、院内で発生した副作用情報の管理を行ったりしています。また、当院では安全使用が必要なハイリスク医薬品(抗MRSA 薬、抗てんかん薬など)については、必要に応じて、各種解析ソフトを利用した血中濃度シミュレーション(TDM)を行って、適正な投与量を決定するための処方支援を行っています。当院は新しい作用の薬だけでなく、近年増加するジェネリック医薬品についても最新の情報収集を行い、安心・安全に医薬品が使用されるための情報管理を行っています。
当院では、感染制御チーム(ICT)、抗菌薬適正使用チーム(AST)、栄養サポートチーム(NST)、認知症・せん妄サポートチーム(DST)、褥瘡対策チーム、糖尿病ケアチーム(DCT)、骨粗鬆症チーム(OLS)など、多職種連携チーム医療が活発に行われています。各チームに複数人の薬剤師を配置して対応しており、担当薬剤師は、定期的に実施される院内ラウンドやカンファレンスに参加して、医薬品が適正かつ安全に使用されるよう、治療計画などに対して薬剤師の専門的立場からチームに提案を行います。その他にも、病院機能に対応するための薬剤師活動を行っている他、院内の様々な委員会活動の構成メンバーとして、医療安全・医薬品適正使用や、病院機能の維持改善にも関わっています。
患者・家族、職員の安全を感染症から守る活動を行う組織で、院内感染症発生状況、院内検出病原体・耐性菌発生状況、
抗菌薬使用状況などの調査・報告・評価などを行います。職場環境感染管理の監視・指導を行う週1 回のICT
(Infection Control Team)ラウンドに参加しています。また、ICD(Infection Control Doctor)を中心とした多職種チー
ムで感染症治療支援を行う、週1 回のAST(Antimicrobial Stewardship Team)ラウンドでも、抗菌薬の適正使用に
関する薬学的介入を行います。
栄養障害の患者に対して適切な栄養管理を行うことは、褥瘡や誤嚥性肺炎を予防し、免疫力低下にともなう院内感染の
発生の抑制につながるとされています。適切な栄養管理により免疫力を改善し、病気の治療効果の向上を目指すチーム
です。薬剤師も、毎週1回のカンファレンス・院内ラウンドに参加し、食欲不振や栄養不良につながる可能性のある薬
剤についてのスクリーニング、栄養管理・輸液療法等に関する薬学的介入等を行います。
認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)や、せん妄に効果的に対応することを目的として活動している多職種連携チームです。(1)術後せん妄・入院中の睡眠障害などに対する薬物のコントロール、(2)認知症の進行度や周辺症状(易怒性、不穏、昼夜逆転、幻視等)への対策、(3)薬剤による副作用や過量投与によるせん妄の可能性について評価、(4)食欲不振や、意欲低下など、食事やリハビリが進まない、などの病棟看護師・介護士などが、患者のケアで困っている症例に対し、週1回のDSTラウンドで介入しています。
褥瘡の発症を抑制することを目的に活動しています。褥瘡が発生している場合には、褥瘡の病態評価に基づいた湿潤環境や薬剤選択を行い、創部状態に合わせて、軟膏剤・被覆保護剤の特性による使い分け、適切な薬物療法を実施します。形成外科医を中心とした週1回の褥瘡回診(病棟ラウンド)を行い、褥瘡の治療に継続的に介入し、また、看護スタッフに日々の褥瘡処置についてアドバイスを行います。薬剤師は、薬剤選択だけでなく、薬物相互作用・輸液などを含めた栄養療法の面からも介入を行います。
日本糖尿病療養指導士(CDEJ︓CertifiedDiabetesEducatorofJapan)は、糖尿病治療に最も大切な自己療養を患者さんに指導する医療スタッフで、当院薬剤部では5名がその資格を有しています。週1回のDCTラウンドでは、特に、血糖コントロールが不安定な患者に対し、糖尿病専門医・糖尿病認定看護師を中心とした多職種連携チームで介入を行います。また、糖尿病教室、透析予防指導などの患者指導や啓発活動にも力を入れています。
日本医療薬学会 医療薬学専門薬剤師 | 1名 |
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日本臨床栄養代謝学会 NST専門療法士 | 3名 |
日本糖尿病療養指導士 | 5名 |
日本薬剤師研修センター 認定実務実習指導薬剤師 | 2名 |
日本病院薬剤師会 認定指導薬剤師 | 1名 |
日本病院薬剤師会 感染制御認定薬剤師 | 2名 |
日本病院薬剤師会 病院薬学認定薬剤師 | 3名 |